ラストに舞い降りる小さなキセキ。
甘い涙を流してください。
今や大阪を代表するスイーツとして全国で愛され、常に予約殺到の「マダムブリュレ」は「MADAME SHINCO」のマダム信子が開発したバウムクーヘン。各メディアにおけるスイーツ特集でも軒並み首位を獲得する大ヒット商品がどのようにして誕生したのか?
マダム信子の波乱万丈に富んだ半生を辿りながら、「やまない雨はない」を信条に強い気持ちを忘れずに苦難を乗り越えた末に誕生した「マダムブリュレ」の秘話と共に、彼女の芯の強い生き様を描いています。
在日韓国人であることが理由で謂れなき差別と貧困に耐えた少女時代、財産と共に掛け替えのない物を失った大人の信子、二人三脚でここまで歩んできた川村幸治との出会い、そして洋菓子店を開店してから今にいたるまでの人生は実話ながらあまりにもドラマチック。
「マダムブリュレ」は、そんな人生を歩んだ信子だからこそ作ることができた珠玉の逸品であることを映画を観て確かめてみて下さい。
マダム信子役を演じるのは既に40年弱のキャリアを誇る名女優、川上麻衣子。パートナーの幸治役を演じるのはドラマ、映画で大活躍の永井大。そしてマダム信子自身も銀座の老舗クラブのママ役で銀幕デビューを果たしています。
大阪で産声を上げ、今や日本中で愛されているスイーツ「マダムブリュレ」を製造、販売をしている「MADAME SHINCO」の創業者、マダム信子こと川村信子。テレビ番組で彼女の生涯に迫る企画が持ち上がり、スタジオでは信子を迎えて今まさに収録が始まろうとしていた。新人局アナの田辺千夏がインタビューをつとめ、カメラが回り出す。
島根県出身だった旧姓・矢沢信子は小学4年生のときに家族と共に尼崎へ移る。そこで待ち受けていたのは昭和30年代の世相を映し出すような貧困に加え、両親が韓国人であったことで被る謂れなき差別。「早く大人になって、見返してやりたい」と強く心に思う信子であった。
大人になった信子は江坂にクラブをオープンさせるも、従業員の悪事により財産を奪われてしまうが、ただでは転ばない信子は銀座に進出して見事に成功を収める。そこで出会った川村幸治と共に再び関西に戻り、焼肉店をオープンさせるも狂牛病騒動をはじめ心が折れそうになる出来事が度重なって降りかかるも幸治が心の支えとなり、やがて幸治と結ばれる。
甘味茶寮の経営を経て、幸治がパティシエと知り合ったことがきっかけでケーキ店を開業することになる。「MADAME SHINCO」の誕生である。しかし、あることがきっかけでパティシエたちが次から次へと店を去ってしまう。誰もいなくなった店の中で、信子はひとり悪戦苦闘をしながらも誰も味わったことのないバウムクーヘン「マダムブリュレ」の開発に成功する。引き続き、お店が大盛況になった後にも降りかかる災難などが語られるが、持ち前のバイタリティと「やまない雨はない」を信条に苦難を乗り越えていく信子であった。
長い収録を終え、局の玄関で千夏と別れた信子は彼女の面影に何か気づいたようだった。それは10年ほど前のほんの些細な出来事であるが、当事者たちにとってはとても忘れる事のできない出来事。それはバウムクーヘンが取り持った小さなキセキ。信子と千夏の心ははそんなキセキに温かさと甘さで満ち溢れていた。